里財小説・「Please Teach」・第二話w

「Please Teach」第二話・「快感」
―そして、その夜、俺は全く眠ることが出来なかった。
いくら目をつぶっても、昼間の里見とのやり取りばかりが浮かんでくるのだ。
枕元を見ると、里見が俺の腕を縛った聴診器があった。
さらに顔が火照ってくるのを感じた。
―俺って、Mっ気あるのかなぁ・・・。
ふと、そんな考えが頭をよぎった。
今日、里見に縛られても、嫌だとは思わなかったし、むしろ、快感というべきモノまで感じてしまっていた自分がいる。
俺は、頭まで布団をかぶった。
俺は結局、一睡も出来ないまま朝を迎えたのだった。
―そしてその日、俺はまたオペが入っていた。
オペが終わってから、俺はシャワー室へ向かった。
そして俺は、思わずつぶやいた。
「今日のオペも・・・完璧だ。」
そう、俺はもうすっかり昨夜のことなど忘れ、オペの満足感に浸っていたのだ。
俺は更衣室で服を脱ぎ、シャワーを浴びた。
まず、血で汚れた腕を洗い流し、汗をかいた髪の毛をよく洗った。
「ふぅっ―。」
大きなオペの後のシャワーは、格別に気持ちいい。
俺は浴槽の中にしばらく浸かってから、シャワー室を出て、更衣室に入った。
すると、後ろに人の気配がする。
「―誰だ・・・?」
俺は静かに言った。
「僕だよ、財前―。」
すると、いきなり昨日のことが俺の頭の中にありありと蘇ってきて、顔が熱くなってきた。俺は動揺を押し隠すように、服を着ながら静かな声で言った。
「何だ、里見か―。誰かと思って、びっくりしたじゃないか―、僕のオペは見てくれたのか?」
「あぁ、もちろんさ―、素晴らしいオペだったよ。」
俺は、里見に褒められて、嬉しかった。
「ふふ・・・、ありがとう。君に褒められるなんて、光栄だな。」
そう言って、俺は白衣のボタンをとめ終えた。
ふと、白衣のポケットに手を入れた。
すると、昨日の聴診器があった。
俺は動揺を抑えきれず、顔が真っ赤になった。里見はすぐそれに気付いたのか、ニヤリと笑った。
「そうだ、財前―、僕の聴診器を知らないかな―?」
俺は焦った。
「しっ、知らないよ―、どこかに置き忘れたんじゃないのかい?」
「おや、財前、君のポケットのそのふくらみは何だい?」
「こっ、これは、聴診器だよ―、ぼっ、僕の聴診器だよ?医師なら誰でも、聴診器の一つや二つ、持っていて当たり前じゃあないか―。」
俺は動揺のあまり、変な答え方をしてしまった。
「―嘘を・・・つくなよ、財前。」
そう、里見は何もかもわかっていたのだ。
俺は、これから何をされるのか、不安になった。
☆つづく☆


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